玉掛け技能講習

消防職員であれば玉掛けクレーンという言葉を聞いたことがあると思います。今回は、私が玉掛けの資格を取得したので、紹介したいと思います。

玉掛けとは

玉掛け作業とは、玉掛け用具をを用いて行う荷掛け及び荷外しを行う作業をいいます。クレーン等を用いて荷を移動さえる作業を行う場合、つり荷をクレーン等のフックでつるために使用する玉掛け用ワイヤーロープ等の玉掛け用具を選定し、荷のつりあげ、つり荷の誘導及びつり荷を所定の位置に置き、つり具から荷を外す一連の作業を玉掛け作業と言います。

消防では、救助工作車のクレーンを用いて、重量物を排除、移動させる時に重量物にワイヤーロープやベルトスリングを選定する時にこの資格が必要になります。クレーンを動かすのは、玉掛けの資格ではなく、クレーンの資格が必要ですので、注意してください。

玉掛け技能講習

技能講習の概要について説明します。

受験コース

持っている資格によって受講コースが分かれていました。講習時間数、受講料が異なります。

区分  所持資格時間  受講料  
Aコース・クレーン運転者免許 ・デリック運転士免許 ・移動式クレーン運転士免許 ・揚貨装置運転士免許・床上操作式クレーン運転技能講習修了証 ・小型移動式クレーン運転技能講習修了証15時間22000円
Bコース・なし19時間24000円

講習時間

講習時間もAコース、Bコースによって異なります。Aコースの方が一日目が短いです。頃となっているのは、2日目の最後には学科試験、3日目の最後には実技試験があるからです。

区分1日目2日目3日目
Aコース8:20~13:508:50~17:00頃8:50~19:00頃
Bコース8:20~18:208:50~17:00頃8:50~19:00頃

1日の時間割も紹介します。この時間割をみると、学生時代を思い出しますね。しかし、休憩時間が5分と短いため、休憩時間はあっという間に終わってしまいます。

時限時間
18:50~9:50
29:55~10:55
311:00~12:00
昼食 
412:50~13:50
513:55~14:55
615:05~16:05
716:10~17:10
817:20~18:20
918:25~19:25

持ち物

  • 筆記用具(鉛筆、消しゴム、マーカーペン)
  • 保安帽
  • 安全靴、作業用皮手袋(実技で使用)
  • カッパ(雨天のみ)

マーカーペンについては、講習のテキストにラインを引くので必要になります。保安帽については、貸し出し用もあるため、必ず必要ではありません。安全靴に関しては、かならず用意しなければならず、講習の1日目にも3日目には用意しておくようにとアナウンスがあります。作業用手袋は、講習を受けるところで販売をしていました。

服装

作業のしやすい長袖長ズボン

学科

1日目と2日目、講義を受けて2日目の最後に学科試験があります。学科試験とありますが、講義をしっかりと聞いていれば簡単に合格することができます。なぜならば、講義中に学科試験に出題されるところが発表されるからです。講義をしっかりと聞き、休憩時間に少し振り返るだけで合格点数をとることができます。

出題箇所

私が受講した講習のときに出題されると言われたテキストをここに紹介します。赤文字で記している箇所が回答する言葉です。回答する方法は選択方式なので、なんとなく覚えていれば回答することができます。私と一緒に受講していた人は全員合格することができていたので、心配することはないでしょう。

  1. この労働安全衛生法は、労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的運動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を促進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。
  2. 事業者は労働災害発生の急迫した危険があるときは、直ちに作業を中止し、労働者を作業場から退避させる等必要な措置を講じなければならない。
  3. 事業者は玉掛け用ワイヤロープ等がフックから外れることを防止するための装置を具備するクレーンを用いて荷をつりあげるときは、当該外れ止め装置を使用しなければならない。
  4. 事業者は、クレーンを用いて作業を行うときは、クレーンの運転者及び玉掛けをする者が当該クレーンの定格荷重を常時知ることができるよう、表示その他の措置を講じなければならない。
  5. 事業者はクレーンを用いて作業を行うときは、クレーンの運転についての合図を定め、合図を行う者を指名して、その者に合図を行わせなければならない。ただし、クレーンの運転者に単独で作業を行わせるときは、この限りではない。
  6. 事業者は、強風のため、クレーンに係る作業の実施について危険が予想されるときは、当該作業を中止しなければならない。
  7. 事業者は、クレーンの運転者を荷をつったままで、運転位置から離れされてはならない。前項の運転者は、荷をつったままで、運転位置を離れてはならない。
  8. 事業者は、クレーン、移動式クレーン、デリックにより、労働者を運搬し、又は労働者をつり上げて作業させてはならない。
  9. 事業者はクレーン、移動式クレーンまたはデリックの玉掛用具であるワイヤロープの安全係数については、6以上でなければ使用してはならない。
  10. 事業者は、クレーン、移動式クレーン又はデリックの玉掛用具であるフック又はシャックルの安全係数については5以上でなければ使用してはならない。前項の安全係数は、フック又はシャックルの切断荷重の値をそれぞれ当該フック又はシャックルにかかる荷重の最大の値で除した値とする。
  11. 事業者はフック、シャックル、リング等の金具で変形しているもの又はき裂があるものをクレーン、移動式クレーン、又はデリックの玉掛用具として使用しなければならない。
  12. 事業者は、エンドレスでないワイヤロープ又はつりチェーンについては、その両端にフック、シャックル、リング又はアイを備えているものでなければ、クレーン、移動式クレーン又はデリックの玉掛け用具として使用しなければならない。
  13. 事業者は、磁力若しくは陰圧により吸着させる玉掛用具、チェーンブロック又はチェーンレバーホイストを用いて玉掛けの作業を行うときは、当該玉掛用具について定められた使用荷重等の範囲で使用しなければならない。
  14. 事業者は、クレーン、移動式クレーン又はデリックの玉掛用具であるワイヤロープ、つりチェーン、繊維ロープ、繊維ベルト又はフック、シャックル、リング等の金具を用いて、玉掛けの作業を行うときはその日の作業を開始する前に当該ワイヤロープ等の異常の有無について点検を行わなければならない。
  15. 法第62条第1項の厚生労働省令で定める危険な業務及び同条第2項により満18歳に満たない者を就かせてはならない業務は、次の各号に掲げるものとする。
    • 10 クレーン、デリック又は揚貨装置の玉掛けの業務
  16. クレーン:クレーンとは、荷を動力を用いてつり上げ及びこれを水平に運搬することを目的とする機械装置であって、移動式クレーン、デリック及び揚貨装置以外のものをいう。
  17. 機械式クレーン:機械式クレーンとは、原動機を内蔵し、かつ、不特定の場所に移動させることができるクレーンをいう。移動式クレーンは走行方向によって陸上を移動するもの、線路上を移動させるもの、水上を移動するものに分類されている。
  18. 揚貨装置とは、船舶に取付け、船に荷を積んだり船から荷から下ろしたり、船倉内の荷を移動させたりする作業をするための機械装置をいう。揚貨装置には、デリック形式、ジフクレーン方式及び橋形クレーン形式のものがある。
  19. つり上げ荷重:クレーン、移動式クレーン又はデリックの構造及び材料に応じて負荷させることができる最大の荷重をいう。
  20. 定格総重量:移動式クレーンの構造及び材料並びにジフ長さ、ジフの傾斜角に応じて負荷させることができる最大の荷重をいう。定格荷重の最大値が吊り上げ荷重となる。
  21. 定格速度:クレーン、移動式クレーン又はデリックにあっては、これに定格荷重に相当する荷重の荷をつって、巻上げ、起伏、横行、走行、旋回等をする場面のそれぞれの最高の速度をいう。
  22. 作業半径:ジフクレーン等の旋回中心からのつり具の中心を通る鉛直線との水平距離をいう。作業半径は旋回半径ともいい、作業半径の最大のものを最大作業(旋回)半径、最小のものを呼ぶ
  23. 玉掛け玉掛け用ワイヤロープやつりチェーンその他の玉掛け用具を用いて、荷をクレーン等のフック(つり具)に掛けたり、外したりする作業をいう。
  24. 地切り:巻上げにより、つり荷を地面、作業床又は、まくらからわずかに離すことをいう。
  25. テルハ:建屋の天井などに取り付けた”はり”に沿って移動(横行という。)するクレーンで通常、I型鋼のフランジにホイストをつり下げた構造のものが多い。荷の巻上げ、巻下げと横行のみを行い、操作は床上で行うものが多い。
  26. ホイールクレーンに分類されるクレーンで特殊なステアリング機構を備え、不整地や比較的軟弱な地盤でも走行できるほか、狭あいな場所での機動性に優れたラフテレーンクレーンと呼ばれるものがある。
  27. 浮きクレーン:浮きクレーンは台船の上にクレーン装置を載せたもので、ジフが起伏しないもの、旋回しないものがある。水上の移動方法は、自航式と非自航式とがある。
  28. スチフレッグデリックは基礎の上に据え付けられたマストの頂部を後方から2本の支柱(ステー)で支え、ブームはマストの根元にピンで結合されている。ウインチは、ガイデリックと同様に離れた位置に据え付けられ、ワイヤロープによって、巻上げ、起伏、旋回の操作を行う。
  29. 揚貨装置は、船舶に荷を積んだり、船舶から荷を下ろしたりするための荷役設備として、船舶に取り付けられたデリックのクレーンで、デリック形式、イフクレーン形式、橋形クレーン形式がある。
  30. フック以外のつり具としては、取り扱う荷に応じて鉱石、砂利、砂などのばら物にはグラフバケット、鋼枝やくず鉄等の磁性体には磁力で吸付けて釣り上げるリフティングマグネット等のつり具が用いられる。
  31. 玉掛け作業は重量物を取り扱うため、危険が多いので作業標準や作業計画を定めて、作業環境の安全について十分注意し、正確な玉掛け方法と大きな動作で明確な合図により安全な作業を行うことが大切である。
  32. 各種作業に適した安全靴を着用する。また、作業に応じて長編上げ靴等の使用や足首周りを保護するために脚絆の着用が望ましい。
  33. 事業者は、玉掛け作業を行う者の中から作業全体の指揮を行う”玉掛け作業責任者”を指名し、各人が受け持つ任務、作業場所、立入禁止場所等の配置並びに指揮命令系統を決定すると共に、これらを作業開始前に周知する。
  34. 玉掛け作業責任者は、玉掛け作業を行う物を集めて作業標準又は作業計画により作業開始前の打ち合わせを行う。
  35. あや掛け:円柱、円盤、円錐状の荷のように底面が円形の荷に、2本のワイヤロープを荷の底面で交差させて掛ける方法であるが、短所が多いので、他の安全なつり具や玉掛け用具の使用が望ましい。
  36. 1本つり(原則禁止):つり荷に目通し深絞りする1本つりは次のような短所があるため原則として行ってはならない。
    • 短所
      • つり荷が水平方向に回転しやすく危険である。
      • 玉掛け用ワイヤロープのアイスプライスが巻き差しの場合はには、回転によって、よりが戻って抜けることがある。
      • アイ部を圧縮止めした玉掛け用ワイヤロープは、回転により圧縮部との境目が痛みやすい。
      • 玉掛け用ワイヤロープが滑らないように目通し部は深絞りする必要があり、極度の折り曲げにより損傷を生じる。
  37. 質量とは、物体が地球上のどこでも、また、目や宇宙のどlこにあっても変化しない重力の影響を除いた物体そのものの量のことである。一般に質量は、量記号としてmで表され、単位はkg(キログラム)やt(トン)などが用いられる。
  38. 重量とは、引力に起因する重力の加速度により、物体がその場所で受ける力のことである。すなわち、物体の質量にその場所でその重力の加速度を乗じた値がその物体に作用する重量である。したがって、重力の加速度が地球の約1/6しかない月では、同じ物体でも、重量は地球の約1/6となる。
  39. 力学である”力”とは、静止している物体を動かし、動いている物体の速度を変え、また、運動を止め、あるいは物体を変形させようとする作用をいう。
  40. 力は必ず、力の大きさ、力の向き、力の作用点の三つの要素があり、これを力の三要素という。
  41. 二つの物体の間で、一方が他方に力を働かせるとき、必ず相手から自分の方に対して力が働いている。このとき、どちらか一方の力を作用といい、他方を反作用という。作用と反作用とは同じ直線上で作用し、大きさが等しく向きが反対である。
  42. 一つの物体に二つ以上の力が作用するとき、これら二つ以上の力をこれらと全く同一の効果を持つ一つの力にまとめることができる。このまとまった一つの力を前の二つの力の合力といい、合力を求めることを力の合成という。
  43. 力が物体を回転させようとする働きを力のモーメントという。ナットをスパナで締め付けるとき、スパナの柄の中ほどを持って締め付けるよりも、柄の端を持って締める方が小さな力ですむ。このスパナの例は、力の回転作用が力の大きさだけでなく、回転軸の中心と力の作用点との距離にも関係することがわかる。
  44. 一点に作用する力のつり合い:一点に二つの力が作用して釣り合っている場合には、二つの力は大きさが等しくその向きは互いに反対である。また、一点に多数の力が作用し、これらの力が釣り合っている条件は、これらの力の合力が0(ゼロ)になることである。
  45. つり荷の質力m(t)を知りたい場合、つり荷の体積V(m3)に、つり荷の材質に応じた1m3 当たりの質量d(t)を乗ずると求められる。
  46. すべての物体には重力が作用している。これらの物体は多くの部分に分割して考えると、分割されたそれぞれの部分に重力が作用しているとみなすことができるが、これらの重力の合力を考えると全部の重力が一つの点に集中していると考えてよい。この合力の作用点が重心と呼ばれるもので重心はある物体については一定の点であり、物体の位置や置き方が変わっても重心は変わらない。また、重心は必ずしも物体の内部にあるとは限らない。
  47. 等速ではない運動の場合、すなわち物体が速度(速さや向き)を変えながら運動する場合、その変化の程度を示す量を加速度という。加速度には正と負があるが、次第に速度を増加させる場合を正の加速度といい、減少させる場合を負の加速度という。
  48. 物体には、外から力が作用しない限り静止しているときは静止の状態を、また運動しているときは同一の運動の状態で永久に続けようとする性質がある。このような性質を慣性という。
  49. 荷の回る速さが早くなれば、遠心力はより大きくなり、この結果、荷はより外側に飛び出すことになる。このような場合には、移動式クレーンを転倒させようとするモーメントは荷が静止しているときに比べはるかに大きくなり、移動式クレーンが転倒してしまうような場合も出てくるので注意が必要である。
  50. 動滑車はロープを引っ張る力を低減させるために用いられ、動滑車を用いて荷を上げる場合には荷の重量の半分の力でよいが、動滑車で荷を1m上げるには、ロープを2m引っ張らなければならない。
  51. いくつかの動滑車と定滑車を組み合わせたものを組み合わせ滑車という。組み合わせ滑車は、小さい力で重いものを上げ下げすることができる。例えば、動滑車3個と定滑車3個を組み合わせたものは、滑車の摩擦及び滑車の重量がないものとすれば、荷の重さの1/6の力で荷を上げることができるが、ロープを1m引っ張っても、荷は1/6mしかあげることができない。
  52. 両端が支えられたはりにFという力が直角に働いてはりを曲げるようにかかる荷重を曲げ荷重という。
  53. 動荷重は荷重の大きさが変動する荷重で、時間とともに連続して変化する繰り返し荷重と極めて短時間に急激に力が加わる衝撃荷重がある。
  54. 衝撃荷重は、巻下げ時の急制動や荷をつり上げる際に玉掛け用ワイヤロープが緩んでいる状態から全速で巻き下げるような場合に生じ、このような場合には、つり荷による荷重よりはるかに大きな荷重が作用するものである。
  55. 安全係数はワイヤロープ、チェーン等の切断荷重と使用するときにかかる最大荷重(力)との比をいう。安全係数の値は、玉掛け用用具の種類、形状、材質、使用方法等を総合的に考慮して決まるが、クレーン等安全規則に定められている玉掛け用具の安全係数については、次のとおりである。
    • ワイヤロープ    6以上
    • チェーン      5以上 ただし、一定の要件を満たすものは4以上
    • フック、シャックル 5以上
  56. 張力係数はつり角度により1本当たりの玉掛け用ワイヤロープ等に作用する荷重(張力)を計算するための割り増し係数である。この張力係数と掛け数を求めることによって、掛け数が変わっても、ワイヤロープ等の1本あたりの荷重(張力)を求めることができる。
  57. モード係数は、玉掛け用ワイヤロープ等のある掛け数、つり角度によりつることができる安全荷重と基本安全荷重との比である。
  58. クレーン等の玉掛けに使用する玉掛け用具には荷の質量、形状などによりワイヤロープ、つりチェーン、ベルトスリング、フック、シャックルなどがある。これらの玉掛け用具の安全係数は、クレーン等安全規則第213、214条で次のように定められている。
    • 玉掛け用ワイヤロープ  6以上
    • 玉掛け用つりチェーン  5以上 ただし一定の要件を満たすものは4以上
    • フック、シャックル   5以上
  59. ワイヤロープは良質の炭素鋼などを冷間加工で伸線した継ぎ目のない素線(ワイヤ)を数十本より合わせてストラン(小なわ)をつくり、ストランドをさらにより合わせて製造される。
  60. ワイヤロープのよりとストランドのよりの方向が反対なものを“普通より“、同一方向のものを“ラングより“といい、さらにワイヤロープのより方向により、“Zより“と“Sより“に分けられる。普通よりのワイヤロープは、ラングよりのワイヤロープに比べ摩耗の度合いは多いが、よりがもどりにくく、キンクを起こしにくいため、取扱いが容易で、玉掛け用としては一般には普通Zよりのワイヤロープが使われる。
  61. 張力係数はつり角度により玉掛け用ワイヤロープに作用する荷重(張力)を計算するための割り増し係数である。
  62. 6×24のワイヤロープのおおよその基本安全荷重は、次の概略式により求めることができる。
    • 基本安全荷重(t)≒0.008×(ワイヤロープ径)2  ただし、ワイヤロープ径はmmとする。
  63. 玉掛用具として使用するワイヤロープは、エンドレス又は両端にフック、シャックルリング又はアイを備えたものでなければならないと定められいる。玉掛け用ワイヤロープの端末処理にはアイスプライス又は圧縮止めが用いられる。
  64. 圧縮加工はロック加工ともいわれ、アイの首部に特殊な金具を入れて圧縮し、ワイヤロープ端をリング状に加工する方法で、加工方法には単純圧縮止めと編み込み後に更に圧縮止めする方法とがある。正しく加工された場合の効率は、ほぼワイヤロープの切断荷重(切断荷重はJISにおいては破断荷重と呼ばれている。)に等しくなる。
  65. ベルトスリングは、玉掛け用ワイヤロープに比べて軽量で柔軟性に富み、取扱いも容易なので、最近では各種の分野で広く用いられる。使用材料としてはナイロン、ポリエステル及びポリプロピレン等の合成繊維が使用されている。これらは、薬品や紫外線に対する抵抗性がそれぞれ異なるため、用途や使用環境条件に応じて適切な素材のものを選ぶことが必要である。
  66. つりクランプは鋼板、形鋼などをつり上げ、運搬に用いられる玉掛け用具である。クランプはその用途及び構造によって縦つり用と横つり用に大別されつり荷を巻き上げた状態でクランプの開口部(くわえ口)が鉛直になるものを縦つり用、クランプの開口部が水平になるものを横つり用等いう。また、縦つり、横つり兼用クランプもある。
  67. ハッカー先端が爪の形状になっている玉掛け用具であり、鋼材(鋼板、形鋼、鋼管など)の端部に爪をかけてつり上げ、運搬するのに用いられており、一本又は二本の爪のものがある。
  68. 玉掛け作業に用いるシャックルは、本体の形状によりバウシャックルとストレートシャックルとがあり、シャックル本体とシャックルボルト又はピンとの組み合わせによって区分されている。
  69. もっこは小形の荷を一度に多数つり上げる際に用いられる荷役作業用具でワイヤロープ製と繊維ロープ製のものがある。いずれもロープを用いて網状に加工されているのでネットスリングともいう。
  70. 当てものは角張った荷や傷付きやすい荷などをつるときに玉掛け用ワイヤロープや荷を保護するために用いられる。
  71. 不適格なワイヤロープの使用禁止の基準
    • ワイヤロープ1よりの間において、素線の数が10パーセント以上の素線が切断しているもの。
    • アイ部はワイヤロープ1よりの間において、素線の数の5パーセント以上の素線が切断しているもの。
    • 直径の減少が公称径の7パーセントを超えるもの。
    • キンクしたもの(曲がり直しをして使用しない)
    • 著しい形崩れ又は著しい腐食があるもの。
  72. 玉掛け作業者はまず、つり上げる荷の質量をできるだけ正確に把握しなければならない。日常取り扱っているものや、質量表示のしてあるものであれば明確であるが、質量の分からない荷は、玉掛け作業者責任者等の関係者に尋ねるか、図面、荷札、送り状などで調べる又は計算によりその質量を確認する。
  73. 玉掛け用具の選定にあっては、荷の質量、重心、形状、つり位置、クレーン等の揚程等の確認と荷の保護について、玉掛け方法を事前に十分検討し、最適な玉掛け用具と補助具を選定する。
  74. つり角度について、「玉掛け作業の安全に係るガイドライン」では、原則として90°以内としているが、2本4点半掛けつりは原則として60°以内、3点調整つり、クランプつり、ハッカーつりでは必ず60°以内とする。
  75. 非対称つりの一種として3点調整つりがある。左右の掛け位置の距離及び形状が異なる荷のバランスをとるため、左右の玉掛け用ワイヤロープの長さを調整して掛ける。長さ調整にはチェーンブロック、チェーンレバーホイスト等を用いる。

実技試験

実技試験は3日目の一番最後に行います。ワイヤ選択、質量目測、実際の玉掛け作業の3つの試験があります。

ワイヤ選択

この実技試験は、つり荷の質量とつり角度が与えられ、それにあったワイヤの太さを選択するというものです。

まず、最初にワイヤ選択の問題を解く上で覚えておかないといけない式があります。それは、

1本当たりのワイヤロープに必要な基本安全荷重=(つり荷の質量/掛け数)×張力係数

です。

ワイヤ選択の問題は、写真を用いて出題されます。また、試験時に”つり角度と張力係数の関係”と”基本安全荷重と公称径の関係”を表した表もみることができます。写真には、荷をつっている状態の図とつり角度、つり荷の質量が記されています。そこから、上記の式に写真に記された値と”つり角度と張力係数の関係”の表を活用して基本安全荷重を求めて、”基本安全荷重と公称径の関係”からワイヤロープの太さを求めます。

その後、ワイヤロープの標本があるので、実際にそれをノギスで測定して、答えのワイヤロープを見つけ出す作業を行います。

ワイヤロープをノギスで測定する練習を講義の時間で行いますが、講義と試験で使用されるワイヤロープは一緒なので、講義のときにワイヤロープの大きさを覚えておけば、試験のときの間違いは少なくなるのではないでしょうか。

質量目測

質量目測の試験は、荷の重さを推定することです。荷の大きさを手を使ってはかり、それに荷の密度を掛けて質量を出します。しかし、試験に出題される荷は講習の中で実際に質量目測を行うので、その数字を覚えておけば、試験はパスすることができます。

講習では、6つの荷の質量目測を行います。手や紙(A4)を使用し、長さを計ります。そして、計算後、指導者にその答えを伝えにいくとそれが試験に合格できる範囲に入っているか、教えてくれます。試験では6つの中から2つ出題されるので、なるべく覚えやすい数字で答えを準備しておくことで簡単に試験を突破することができます。

玉掛け作業

この試験は、実際に玉掛け作業責任者として荷を持ち上げ、荷を移動させ、降ろす一連の作業を行います。作業者は他の講習者で、試験実施者は指示を行います。これも約3回通り練習を行い、他の受講者が実施しているところも見ているので、その練習の時間内にやり方は覚えることができます。

  1. 作業開始の挨拶
  2. 重心位置の見極め
  3. 作業者に「荷の質量と使用するワイヤーロープ」と告げる
    • 荷の質量とワイヤロープは決まった数字をいう。
  4. ワイヤロープの点検
    • アイ部、ワイヤの確認
  5. フックの誘導
    • 合図を用いて、フックを荷の上まで移動させます。
  6. 玉掛け
    • 「2本4点あだまき掛け左上から右下に」と指示する。
  7. フックを開き、アイ部をつける順番を指示する。
  8. 地切り前の確認
    • 垂直確認(受信の真上にフックがあるか) 2方向から
    • フックよし(フックにアイが正しくかかっているか)
    • 角度よし(つり角度、玉掛け位置は良いか)
    • はりよし(ワイヤに均等に荷重がかかっているか)
    • 安定よし(荷は安定しているか)
    • 玉掛けよし
  9. 安全位置に待避
  10. 地切り
  11. 地切り後の確認
    • フックよし
    • 角度よし
    • 安定よし
    • 水平よし
    • 地切りよし
  12. 荷の移動
    • クレーン操作者に合図を用いて水平移動させる。
  13. 荷の着床前の確認
    • 位置よし
    • 向きよし
    • まくらよし(降ろす位置にまくらがあるか)
  14. 着床
  15. 着床後の確認
    • 位置よし
    • 向きよし
    • 安定よし
  16. ワイヤロープの撤収、誘導ロープの撤収の指示

まとめ

今回は玉掛けの資格について説明してきました。救助工作車にクレーンが付いているところも多いと思うので、救助隊員の人は取得した方が良い資格かもしれません。

私は、この講習は受ければだれもが合格できる資格だと思っています。

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